全日本ラリー選手権第6戦 新城ラリー2010

High Performance Brakes

全日本ラリー選手権第6戦 新城ラリー2010

DL・PETRONAS・BRIG・VITZメロンブックスDUNLOPテインBRIGインテグラ
開催日時:9月24~26日
開催場所:愛知県新城市周辺
スペシャルステージ本数:13本
スペシャルステージ総距離:105.98km
ラリー総距離:2デイ318.64km
SS路面:ターマック(舗装路)
SS路面状況:デイ1 ドライ一部ウェット、デイ2 ドライ
勝田範彦が磐石の展開で今期4勝目、チャンピオンに王手
 前戦から2ヶ月以上のインターバルをはさんで、全日本ラリーは愛知県新城市でシリーズの天王山3連戦の緒戦を迎えた。今年の記録的な猛暑を考えれば、このインターバルは選手たちにとって僥倖だったと言えるだろう。ラリー期間に入って新城は一気に秋めき、デイ1の最低気温は13.8_まで下がった。金曜日までの2日間は雨模様、デイ1の朝には快晴となったが、この雨が路面コンディションを難しいものとし、今年も雁峰林道で多くのドラマを生むことになった。
 ラリーは金曜日にレキを行い、土曜日の朝にスタート、日曜日の昼過ぎにフィニッシュするスケジュールで行われた。SSはデイ1に7本、74.12km、デイ2に6本、31.86km、総距離105.98km。路面はオールターマック。2車線道路の豪快なヒルクライムから、JN4なら車幅イコール道幅に感じられるようなこの地方の典型的な林道まで、実に変化に富んだコースが用意された。
 JN4は14台のエントリー。レギュラー選手主体となる中、アジアパシフィックラリー選手権では速さに定評のある柳澤宏至ランサーエボXが7年ぶり全日本ラリーに出場してきたのが注目される。新城市の桜渕公園のセレモニアルスタートで大勢のギャラリーに見送られたラリー車はSS1作手に向かう。本宮山スカイラインを一気に駆け上がる3.81kmのこのSSを制したのは奴田原文雄ランサーエボX。奴田原の平均速度は101km/hにも達した。0.1秒差で柳澤、更に2.1秒差で勝田範彦インプレッサGRBが続く。
 SS2は雁峰北19.40km。もはや新城ラリーの代名詞とも言える雁峰林道だが、新しく北側のエリアを使用することにより、とうとうその全容を見ることとなった。スタートして3kmほどは深い谷底を緩やかに上り、そこそこスピードも乗る。そこから無数にコーナーが続く峠越えとなり、12.5km地点からはほぼ平坦になり、2008年に使用した区間と重なる。2/3が全日本ラリー初使用となるこのSSを制したのは勝田。そして優勝争いは、早くもこのSS2で決着が着いたと言って良いだろう。奴田原がスタートから2kmほどの左コーナーで苔に乗ってしまい、ホイールをヒット、SS中でのタイヤ交換を余儀なくされてしまったのだ。奴田原はこの後、クラッチにもトラブルをかかえ、このSSはフィニッシュしたものの、次のリエゾン区間で走行不能となり早々にリタイアとなってしまった。また、SS1のハイスピードでのタイムを捨ててまでも「勝負どころの雁峰に合わせてきた」という石田正史ランサーエボXも、スタートから2.5kmほどの右コーナーで苔に乗ってコースアウト、側溝から出ることが出来ずに前戦に続きリタイアを喫することとなった。注目の柳澤も「ブレーキがもたない」と、1分以上の遅れで優勝争いからは遠ざかってしまい、勝田を追うのは徳尾慶太郎ランサーエボX、高山仁ランサーエボVII、杉村哲郎インプレッサGRBとなった。勝田からは20秒以上離れたものの、この3台が後ろとも20秒以上離れた2位集団を形成する。SS3はギャラリーステージ、ほうらいせん。上って下る4.15kmで杉村がベスト。1.7秒差で勝田が続いた。徳尾はこの1本で大きく遅れ、2位争いは杉村と高山に絞られた様相だ。
 サービスを挟んだセクション2はSS4、再び雁峰北から始まる。勝田がSS2を6.5秒上回るタイムでまたもベスト。2番手とのタイム差はすでに40秒近い。後方の2位争いは、「SS2は失敗して一時停止してしまった」という高山が杉村を13.6秒上回るタイムでフィニッシュし逆転した。SS5はほうらいせんの2回目。ここは高山がベスト。杉村、勝田もコンマ差で上位3台には動きが無い。
 デイ1の最終セクションは2回目の作手と3回目の雁峰北。SS6作手は柳澤がベスト、勝田、高山が続く。SS7雁峰北は勝田が若干ペースを落とし、杉村がSS4の自己タイムを20.3秒も縮める走りでベスト。3.8秒差で勝田、さらに3.4秒差で高山が続いた。デイ1終了時点での順位は1位勝田、42.0秒差で高山、4.9秒後ろに杉村だ。
 デイ2も新城は快晴の朝を迎えた。この日のSSは1.5車線幅のヒルクライム&ダウン大平4.15kmと前日の雁峰北の続きを走る雁峰西7.26km、そしてほうらいせん4.15kmを2本ずつ走る。完全なドライコンディションの中、勝田はこの日の6SS全てをベストタイムで走りきり、高山との差を65.9秒まで広げ、磐石の走りで今季4勝目を挙げた。一方、注目の2位争いはSS8、SS9で杉村が連続して高山を上回り、差を2.1秒まで詰める。高山も杉村も一歩も譲らないまま、後2本を残して差は2.4秒のまま動かない。ひとつのミスも許されない状況の中、高山はSS12で2.1秒、SS13で2.9秒とじりじりと杉村を放し、トータルのタイム差を7.4秒まで広げ、自己最高位タイの総合2位を獲得した。3位には杉村が入った。
 JN3クラスは22台のエントリー。シリーズリーダーの香川秀樹インテグラ、「200ccの差は大きい」と今回はインテグラをレンタルしてきた田中伸幸、ターマックでは今年負けなしの眞貝知志インテグラ、今季初参戦ながら速さには定評のある上原利宏シビックら、実力者の揃う顔ぶれとなった。ラリーはSS1から眞貝が抜け出し、SS2雁峰北を終わった時点で、2番手上原との差は20.0秒に開いた。3番手は上原のわずか1.6秒後ろに、雁峰でのハンドリングに勝るスターレットを駆る明治慎太郎がつける。チャンピオンを争う香川はコースアウトしてステアリングにダメージを負い、この時点で眞貝から30秒以上遅れてしまった。田中も「走りながらセッティングしている」とインテグラにてこずり、タイムが伸びない。セクション2に入り、再び雁峰北。眞貝は総合3番手に入るタイムでマージンを築く。2番手との差はここですでに54.4秒、眞貝はその後の3本も全てベストタイムで走り、デイ1終了時には2位に1分以上の差で、すっかり一人旅になった。2位争いはSS4で動いた。明治がここでストップ、香川がSS2の自己タイムを25.6秒も上回る好タイムで上原に追いつき、上原と香川の一騎打ちとなる。デイ1終了時点で2位香川と3位上原のタイム差はたったの0.5秒だ。
 明けてデイ2。眞貝は快調に一人旅を続け、この日も6本中4本のSSでベストタイムを並べ、2番手に86.7秒差の大差をつけ、総合5位でJN3クラスの今季3勝目を飾った。2位争いは相変わらず僅差の戦いだ。香川と上原の差はほとんどのSSでコンマ差だったが、SS9で上原が香川に4.8秒差のベストタイムを出し、これが勝負を決める1本となった。2位には上原、3位には香川が入った。
 JN2クラスは9台のエントリー。天野智之ヴィッツがチャンピオンに王手をかける中、それを追う鷲尾俊一スイフトの奮起が期待される。SS1を制したのは天野でも鷲尾でもなく中西昌人スイフトだった。しかし、SS2、天野は2位以下に1分近い大差をつけ、早くも圧倒的なラリーリーダーに立つ。SS4、2回目の雁峰北では更にその差を広げ、デイ1だけで2位との差は2分以上となった。デイ2の天野はペースダウンする余裕まで見せ、最終的に2位と2分6秒差で今季5勝目、全クラスの中で最初の2010年シリーズチャンピオンを決めた。
JN1クラスは成立しなかった。
<優勝者のコメント>
●JN4優勝ドライバー 勝田範彦
 雁峰北1本目である程度勝負は決まったが、路面がドライ、ウェット混じりで難しかった。2回目の雁峰北では側溝を飛び越えてコースアウトしたが、道に戻れた。運も良かったと思う。今回でだいぶチャンピオンに近づいたので、この先も気を抜かずに行きたい。
●JN4優勝コドライバー 足立さやか
 新城は初めてだったが、雁峰があんなにきついとは思っていなかった。怖い印象の道で、ノートを読むのに必死だった。レキ中にあれほど議論したことはこれまで無かった。
●JN3優勝ドライバー 眞貝知志
 シーズン前半戦はインテグラのセッティングがなかなか決まらなかったが、久万高原の後、夏の間にいろいろやって、ようやくシビックの時より速く走れるようになった。乗りやすさが今回のタイムにつながっている。残り2戦も出る予定。チャンピオン争いにもう絡めないのは判っているので、シリーズをかきまわしたい。年間最多勝を狙う。
●JN3優勝コドライバー 田中直哉
 今回はずば抜けている印象だが、他のクラスや過去のタイムを見ると、決してそんなにオーバーペースではない。全てのSSをプッシュするわけではなく、押さえるところはしっかり押さえていた。1本目の雁峰北は苦しかったが、がんばった甲斐があったと思う。
●JN2優勝ドライバー 天野智之
 ありがとうございます。予想以上に天気が良く、かなり暑かった。去年はいいところで車が壊れてリタイアすることも多かったので、無事ゴールできてホッとした。残り2戦も出る方向で考えている。
●JN2優勝コドライバー 井上裕紀子
 チャンピオンには3位以上で良いという頭はあったので、そのことについては特に考えていなかった。いつもどおり、ドライバーが走りに集中して安全に速く走れるように手助けしようと思っていた。いつもどおりやることをやってこの結果になった。 
テキスト&写真提供:JRCA